2025年01月08日

お知らせ

久保田征孝~跳ぶエンターテイナー~

High Jumper ・YouTuber・そしてWaiterその三足の草鞋を履きこなし、どの肩書の上でも自分自身の軸を見失わない姿が印象的だった。今回はそんな走り高跳びの久保田選手に迫る。


走り高跳びは単にジャンプするだけでなく技術・スピード・戦略・精神力が求められる競技だ。そびえ立つバーへの恐怖や緊張を超える精神が必要な競技で、最後の一跳びで一発逆転が見られることから強いメンタルが勝負の分かれ目となることもあると言われている。世界記録は2m45㎝で、久保田選手のベスト記録も2mを超える。身長をゆうに超える高さのバーを跳び越える瞬間はまるでスローモーションのように見え、その人間離れした身体能力と心理的要素が重なり見る人を魅了している競技である。


そんな走り高跳びとの出会いは中学生時代、世界陸上をTVで見て魅了された。いつの時代も憧れは人の原動力となる。そのころからは走り高跳び一筋である。


そして久保田選手のもう1つの顔が今や当たり前に現代人の生活の一部となったYouTube、そして小学生のなりたい職業にもランクインするYouTuberである。動画は週に2本はアップし常に視聴者を飽きさせない。内容は走り高跳びの専門的な解説から、チャレンジ企画、モンスター久保田の日常と様々だ。現代の世の中にはYouTuberがあふれている、その中でどのように差別化し勝負しているのか尋ねた。「単純に自分の記録用です。受け取り方はリスナーに任せている。」と気負う様子はない。陸上競技人口の多さがリスナー獲得につながっている。としながらも、走り高跳びの人口は各都道府県30人前後ではないかと分析する。著者が視聴したなかで陸上素人にも理解できたのは、久保田選手の助走へのこだわりだ。その点について伺うと「自分が勝負出来ているのは内傾に深さが出せる点、強い遠心力を使って飛んでいる。」「走り高跳びは自由度が高い競技で、スタート位置も助走距離も決められておらず、いろんなタイプの選手がいる。その中で高さだけを競う、そこが面白さです」とし「生まれ持った身体のバネの柔らかさ。これは強みでもあり弱みでもありますね」と笑顔を見せる。


精神面の安定が大きく競技結果を左右するこの走り高跳びでも、全く失敗を恐れないと言う久保田選手。「誰かのためや勝つためにやっているのではないのでプレッシャーはない」自身が準備してきたジャンプを本番で出すことだけにこだわる。自分自身の記録を追う事、それに尽きるのだ。ハマった跳躍はなかなか出るものではなく、だからこそいいジャンプが出来たときの楽しさの病みつきになる。「走り高跳びを続ける理由もYouTubeを発信するのも自身が楽しいから。」その楽しみを得るために計り知れない時間を費やし、努力している過程があるのは言うまでもない。それを見せない姿はエンタメ精神の塊なのである。


久保田選手にとって走り高跳びとは?と問うと「期限付きの最高の趣味かな」とのこと。「本気で競技に打ち込めるのには期限がある。」こんなに取り組んでいて趣味なのか?疑問に思うがそこが久保田流エンタメだと受け取る。なぜなら久保田選手は前職より転職し登利平に入社した。その動機は競技環境を求めてのものだった。また以前取材に伺った際走り込みをする姿を見かけていて、当時走り高跳びに走り込みが必要なのか疑問に思っていたのを覚えている。その理由を今回尋ねると、ドリルの一環として走りの形を整えるためだという。ほんの数歩の助走のために走りこむ努力は趣味の範疇を超えている。YouTubeも同様だ、数分の動画をアップする裏には構成を練り、実際に撮影し、それを編集する。そうして1つの作品を作っていく。そんな膨大な時間が隠れているのだ。登利平への入社のきっかけは小渕選手であり、彼の姿を見て自身も2m20㎝を超える記録を出すべく転職活動を試みた。現在の練習環境を与えられていることに、中村副社長と小渕選手には感謝しかないと語る久保田選手は普段は店舗のホールで勤務しており、彼のコミュニケーション能力と人を楽しませる力は店舗とお客様の気分を明るくしていると想像がつく。


走り高跳びでの夢は、「ここまで競技に打ち込んできた知識にプライドがあるので、高跳びだけで食べていけるようになりたい」そして「高跳びのチームを作りたい」と生涯かけて高跳びと共に生きるその思いと情熱を語ってくれた。モンスター久保田の生きる軸は楽しいと思えることに全力投球。その裏にある助走部分を他人に見せずに華麗に跳び超えて行く姿。跳ぶエンターテイナーであり続けること。